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[野方の家] なぜオーダーメイドのキッチンを選んだか

「野方の家」では、オーダー家具・キッチンの製作をされているクニナカさんに、オーダーメイドでキッチンを造って頂きました。

数多あるキッチンの中で、なぜオーダーメイドという選択に至ったのか、についてご紹介します。


家づくりで投資すべき所はどこか?



休日には友人と一緒に美味しい食事をつくり、楽しい時間を過ごされるご夫婦。
建主にとってキッチンは、人が集い、繋がりをつくり、家族の健康の源をつくる大切な場所でした。

そのライフスタイルから、「野方の家」ではキッチンは主役。

そこに居るだけで心地よく、快適だと感じるために設計を進めていきました。

-断熱・気密をしっかり施し、室内に温度ムラを作らない

-自然素材を使った体に負担の少ない環境をつくる

-パッシブデザインを生かし、夏は軒や植栽で日差しを遮ぎり涼しく。冬は大きな窓からたっぷり日差しが入り暖かく。温熱環境を整える。

-その空間の中心にキッチンを配置し、空間全体が見渡せる

-南・北・東にある窓から、空や緑を感じられる

家族の気配を感じながら、友人と会話を楽しみながら、料理をする最高の場所です。

キッチンから見渡す室内。冬至の正午の日差しのシミュレーション(設計時)

大まかな空間デザインが決まり、ここからキッチンの詳細をどうするか?

既製品を選ぶ、セミオーダーする、フルオーダーする、大工さんの造作という選択肢が様々ありますが、「野方の家」はキッチンの存在がご夫婦の暮らしぶりを象徴するものです。

私たち設計者は、限られた予算の中で”クライアントが大切にしている価値”は何かをしっかり会話し、全体の中で「本当にお金をかけるべき所・抜き所」のポイントを提案をするのも大切な役割です。

・建主が本当に使い勝手がよいと思える設計であること
・主役でありながら、この空間にすっと馴染むもの
・10年、20年後も飽きず、「いいな」と思える頑丈で美しいもの

設計者としては、「野方の家」のキッチンは将来の暮らしへの投資と考え、ここではキッチン・家具の設計力、品質、技術に信頼の置けるクニナカさんのオーダーキッチンが最適だと提案するに至りました。
もちろん、その分の見えない別の部分は手を抜く減額案もセットです。

決め手は、見て・触って体感すること



提案したものの、オーダーメイドはそれなりに費用がかかるので、建主からすると簡単に受け入れるのは難しいものです。
建主自身も引き続き”理想のキッチン”を探す中で、東京都三鷹市にあるキッチン用品「だいどこ道具 ツチキリ」さんを訪れた時、ようやく「ああ、これだ!こんなキッチンにしたい!」と感じたキッチンに出会われました。

ツチキリさんでは店内のキッチンで台所用品を自由に試すことができるのですが、そこで体感した美しさ、手触り、使い勝手に感激されたそう。

そのツチキリさんのキッチンは、実はクニナカさんが造られたものであることが判明し「設計者の助言 + 実際のものの良さ。これならクニナカさんに安心してお願いできる」と決断に至りました。


動線を意識したキッチン設計



クニナカさんでは、
「買い物をして帰宅」→「玄関から冷蔵庫に向かう」→「冷蔵庫に食材を入れる」→「洗う」→「切る」→「調理する」→「盛り付ける」→「出す」→「皿を洗う」→「片付け」という一連の動作を意識した中で、どこに何があるべきかの詳細を設計されます。

建物を外側から考える私たち設計者と同じ視点ですね。

特に、冷蔵庫・洗い場・ガスコンロの三角ゾーンは、広すぎても狭すぎても不便なので適切な距離を意識されるそうです。

建主の身長に合わせて天板の高さを決めるのですが、その際「切る」作業において上腕が上がり過ぎないよう、まな板3cm分の厚みを考慮した上で考えるとの事。
一方、ガスコンロはその天板と同じ高さではなく、覗き込まずに済むように4cmほど天板を下げるそう。

冷蔵庫(左)・シンク(右)・ガスコンロ(正面)の位置と高さ。
洗う、切る、調理する、盛り付ける、ちょっと座って食べる、のコの字動線


空間に馴染む木製キッチン



今回は、動線と一体感を考慮してダイニング家具もキッチンと一体でクニナカさんにオーダーしました。
使用した木材はアルダーの無垢材。
木目が美しく、自然素材を使った「野方の家」の空間にすっと馴染んでくれました。経年変化でさらにツヤを見せてくれるのが楽しみです。

ダイニング側のグラス・コップの収納は、建主の訪問者への気遣いも。目隠しの役割をしつつ、そこが何のスペースか訪問者が識別でき、自ら取り出してもらいやすいようチェッカーガラスにしています。(和室の障子扉も、これに合わせる形でチェッカーガラスにしました。)

建主の暮らしに合わせたデザイン。奥は子供のおもちゃ等を収納できるスペース、真ん中は絵本など取り出しやすい高さに設えた本棚、手前はグラス・コップ類の収納スペース。
キッチンから南側の庭を望む

家づくりは建主の価値判断基準に基づきます。
大切にしているは部分にはしっかり投資し、力を抜ける部分は抜く。
メリハリをつけて、建主の暮らしにあわせた家づくりを進めていきます。


冨田 享祐

DATE2020. 12. 22
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WRITERHAN環境・建築設計事務所